しどろもどろ。
2013/03/06 | ||
ロート製薬が、就職情報サイトからの募集を止め、原則として直接会った学生のみがエントリーシートを提出できる方式に変えた。
ネットに頼る就活では、企業も学生側も、お互いのことがよく分からないままになるとの指摘が強いからだという。 実はロート製薬は、11年度の採用から就職情報サイトからの募集を止め、応募は電話による受付としていた。
斯くあるべきであろう。
会話の主役がメールやライン、Facebookなどの昨今、子どもたちは、大人と電話で話をする機会が失われている。
私の頃は、携帯電話がなかったので、彼女と話がしたければ彼女の家の固定電話にかけるしかない。
普段、学校でどんなにつっぱって偉そうにしていようが、リーゼントにしようが、タバコを吸おうが、彼女の家に電話をかけるときの緊張は半端なく、チョーまじめな青年のような声を出し、力いっぱい受話器を握りしめていた。
「彼女が直接出ますように」と祈るのだが、しかし、その期待はことごとく裏切られ、決まって親が出る。 母親はまだマシなのだが、厄介なのが時に、父親が出てくることだ。この関所を通過するのには、毎回苦労した。
父親が電話に出るともうそれだけで、まるで道でバッタリと鬼にでも出くわしたかの如く呼吸が止まり、用意していた最初の一言につまり、ヘンテコリンな敬語を使いまわしながら、“しどろもどろ”になる。
この“しどろもどろ”の経験が、今、何かの役に立っているわけではないが、しかし、こと「採用基準」となると、企業側としては、商品カゴに入っているコピペして作成された、お決まりのPRが書かれた無機質なエントリーシートよりも、生の“しどろもどろ”の方を期待しているのではないだろうか。
緊張せずにペラペラ喋る人よりも、緊張して“しどろもどろ”になりながらも必死に喋る人の方がなんだか信頼できそうに思えるのは、私だけだろうか。
我が家には年頃の娘がいるが、固定電話には、“しどろもどろ”がかかってこない。
いや、それどころか、最近、固定電話が鳴っているのを聞いたことがない。
これでいいのか…。
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林 正寛 | ||