生きててよかった。

生きててよかった。

  2013/04/18  
     
 

歌手の華原朋美さんが昨日、復帰曲をライブで披露し、歌い終わった瞬間、「生きててよかった」と声を絞り出し、あとは声にならずに泣き続けていた。

 

私たちの想像を超える「生」への苦しい戦いがあったのだろう。

また、あの華原朋美さんの歌声を聴くことができてよかったと思う。

 

作家の村上春樹さんのある随筆でのことば。

「人間は生涯に何か一つ大事なものを探し求めるが、見つけられる人は少ない。にもかかわらず我々は探し続けなくてはならない。そうしなければ生きている意味がなくなるから」

 

 ― 生きていることに意味もへったくれもあるもんか…。

 

と私は思う。

 

生きている意味を求め、何か一つの大事なものを探し続けるなんて訳がわからなくなるだけだから、やめた方がいい。

「この世に生を受けた」、「生かされている」そのこと自体、かけがえがないのに、そこにさらに意味を求めてどうする。

そんなのは、ソクラテスかプラトンに任せておけばいい。

 

自分の思うように人生を過ごすのは難しいし、いいことをしたからといって、いいことがあるわけではない。努力しても報われないばかりか、反対につらい出来事はちょいちょいやってくる。

人生は不条理、社会は理不尽だらけだ。

 

それでも、自分の中にいるもう一人の自分と話をしながら、声なき声を聞きながら、適当に自分と折り合いをつけながら生きていく。

そうやって生きていくこと自体が、大事なんじゃないかな。

 

そこを忘れてさらに大事な何かを探すなんて、本筋を見失うだけだ。

 

自分の代わりはいない自分だけの人生に、生きている意味がなくなったりするはずがない。

 

  

 
  林 正寛  
     
     

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