上司と部下。
2013/08/07 | ||
先日、昼間の電車での移動中。 前に座っているサラリーマン2人。見るからに年齢差は大きいので、上司と部下でだろう。 聞き取りにくいが、上司が部下をずーっと叱りつけている。
「〇〇くんのことはイイ。僕は君のことを言ってるんや。何度も同じことを言わせるな」
結構、ねちねちと上司はしつこい。
― そろそろ部下が逆ギレして怒り出さないかなぁ。言い返してやれ。
だが、部下は真面目に「はい、すみません」を繰り返している。
― あれはあれで偉いな。私もあの態度ができてりゃ、もう少し出世していたものを…。
しかし、上司が最後に言った言葉が余計だった。 「君のことが憎くて言ってるんとちゃうからな。君のためを思って言ってるんやから、わかるやろ?」 結局この上司も自信が無いのだろう。いかにも料簡が狭い。
経営者や学識者でつくる日本生産性本部の調査。 課長級の89%が「叱責は育成に効果がある」と回答。これに対し一般社員は、56%が「叱責されるとやる気を失う」と答えている。
一方、課長級の80%が「部下を褒める」と答えたのに対し、「上司が褒めてくれる」と答えた一般社員は51%にとどまる。 双方の認識の差は大きい。
何故か。しっかりと叱り、きちんと褒めていない。叱るも褒めるも心がこもっていないからではないだろうか。 最近はパワハラなんぞの影響もあり、上司は部下をガツンと叱りにくい。 だからといって、多少の冗談を挟みながらの「ねちねち」は良くない。叱っておいて、すぐにフォローに回る「マッチポンプ」も良くない。誰かを使って伝言ゲームで叱るのはもっと良くない。
嫌われることを恐れず、自分の言葉で自信を持って、しっかりと叱ればいいと思う。人間だから時には感情的にもなる。それでもいい。そして、褒めるときには思いっ切り褒めてやる。
部下からすれば意に沿わない叱責もあるだろうが、そういったことも含めて世の中の理不尽さを吸収できる大人になって欲しい。 世の中の理不尽さを知り、知ったうえで平然と白いボールを黒だと言える人間でないと、本当の困難には立ち向かえない。
育てるのは、そして磨くのは人としての器である。 そこをはき違えると、上司と部下はいつまで経っても平行線で交わることは無い。
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林 正寛 | ||