夢は夜ひらく。

夢は夜ひらく。

  2013/08/27  
     
 

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少し前の話ではあるが、「大阪キタ新地」での二次会の席。ラウンジでホステスさんに聞いた。

 

「なんでこの店で働いてるの」

「学費を稼ぎたいから」

「学費って、君は大学生か。お家の人はこの店で働いていることは知ってるの?」

「知ってるよ。昼間は〇〇大学に通ってるの。獣医師になりたいんだけど、結構、お金掛かるから」

 

― 有名私立大学じゃないか…。

 

「ごめん、時間だから帰るね。終電に乗らないと。じゃあ、バイバーイ」

 

― バイバーイって、オレは客だけど。

 

彼女は、ジーンズとTシャツ姿に着替えて颯爽と帰宅していった。

 

変われば変わるもんだ。

「大阪キタ新地」といえば、大阪を代表する歓楽街である。

高級飲食店が多く集まり、私はバブル時代に会社の接待で使うようになったが、当時は、重要な取引先との社交の場として貴重な拠点であった。

 

あの頃はまだ、昭和の香りが色濃く残る気品に満ちた店も多く、店側はもちろんであるが、客側にも一定の礼儀礼節が求められ、和やかな雰囲気の中に独特の緊張感があるような一流の歓楽街であった。

 

客の秘密を守るのは「新地の掟」。だから、重要な商談で店を使うこともあった。

 

それが、バブル崩壊やらリーマンショックを経て、キャバクラやガールズバー、カラオケラウンジなどが進出しすっかりカジュアル化してしまった。

 

学費を稼ぐために学生がアルバイトでホステスをして、「ジーンズとTシャツ姿」で客に「バイバーイ」なんて。

 

― 信じられんな…。

 

 

華やかだけど、どこか影があり、きれいだけど、触ればトゲで傷ついてしまう。

男も女も一夜限りの夢を求めて彷徨ったそんな大人の街、「大阪キタ新地」も今は昔である。

遠くで聴こえる彼女の歌声もどこか虚しい。

 

 

赤く咲くのは けしの花 白く咲くのは ユリの花

どう咲きゃいいのさ この私

夢は夜ひらく

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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