まつエク。
2014/08/02 | ||
仕事中に家人へ用事があって電話をしたけど出ない。 しばらくしてから、着信履歴を見たのか、かかってきた。
「外出してたのか?」
「今、家に帰ってきました。まつエクに行ってたの」
「…なんだ、そのマツエグって。なにがエグいんだ」
「エグではなくエク。まつげエクステンションです。つけまつげのようなものです」
「外観とか外構を意味するエクステリアの間違いじゃないのか。つまり、外観を工事するという意味で…」
「あら、もしかしてそうかしら。まぁ、どっちでもいいんですけど」
― おおざっぱな奴だナ…。
夜、家にたどり着いたら、「お帰りなさい」パチパチッ!
「た、ただいま…」
「どう? これ? まつエク」パチパチッ!
― どうって言われてもナ。イイような、ソウデナイような…。
「感想はないの? 」パチパチッ!
「今までなかったものが目の前にあるのって、目障りじゃないのか」
「そんなことあるわけないじゃないですか。もういいです」パチパチッ!
― その、パチパチッていうの、しばらく続くのかナ…。
それにしても、昼間に電話で「まつエク」情報を仕入れておいて良かった。 もし何も言われなければ100%気が付かずに、風呂入って、飯食って、寝るところだった。
普段、髪を切っただの染めただのにまったく気が付かないので、クレームが出ていたが、今回は免れた。
しかし、よくできている。本物のまつげとまったく見分けがつかない。
女性が知り合ったときにすでに「まつエク」をやっていて、そうだと言われなければ男性は気が付かないだろう。
最近はメイクだけでもかなり「変身」できるようになったのに、さらにガッチリと「まつエク」なんてされてしまえば、「ありのままの姿」を見抜くのは至難の業になる。
結婚してから、「実はこれが私のありのままの姿なの」なんて言われてもどう対処すればいいのだろうか。
「なにも怖くない」だって?
そりゃ歌の話だろ。実際は怖いに決まっている。
「最近、シミが多くて、シミ取りばかりお願いしてるのよ」
「へーっ、どれどれ」
「私の顔じゃなくて、あなたのワイシャツです。クリーニング屋さんの話ですけど!」
― シマッタ…。
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林 正寛 | ||