女の勘。
2014/08/07 | ||
右のテーブルは、会社の上司と部下の男性グループ5人。
時々、ドッと笑いが起こるが、あとは行儀よく、上司を中心に「会話」をしながら飲んでいる。
お酒のおかわりは、上司が促さなければ若手自らは手を挙げない。
料理にしても、上司が注文したものを上司が箸をつけたあとに、若手が食べている。
さすが、ニッポンのサラリーマンである。
一方、左のテーブルは、女性だけのグループ4人。
年齢構成はバラバラなので、同じ職場の先輩後輩の集まりかもしれない。
こちらは、盆と正月とクリスマスとリオのカーニバルがいっぺんにやってきたような騒ぎで、先輩も後輩もあったもんじゃない。
「あ、私、これ食べてみたーい」
「私はこれね。それから、グレープフルーツ酎ハイおかわり」
「結構、体にいいみたいよ」
「でしょー、石原さとみってなんか腹立つ」
「あっ、きた! 見てー! 美味しそう」
― これでよく「会」が成立するもんだ。まるでエスパーのような…。
男というのは「狩り」で生計を立てていた時代から「係」が決められていて、指示する係、獲物を追う係、仕留める係に分かれていた。決め手はチームワークである。
手ぶらで帰れば嫁に叱られる。だから、自分は仕留める役をしたくても、長老から「お前は追え」と言われれば従ってきたわけである。
戦国時代も江戸時代も、その後、近代においても、男はそうやって「縦社会」の中で生きてきた。DNAが「縦」なんだろうな。
子どもの頃からすでにそうで、野球をやっていても、思いっ切り打ちたいのに監督から「バント」のサインがでれば素直に従う。
男は、上司からの命令に従い、チームの勝利(会社の利益)のために自分を犠牲にして働くという役割を、太古の昔から、また、子どもの頃から担っているわけだ。
一方、女性は、上下関係や年齢、肩書などにはあまりとらわれず、固まるというか、団結するというか、「横」とのつながりで生きているように思う。
ただ、「横」の関係性の維持は苦労が多く、はみ出さないよう、自分を殺しながら常につるんでなきゃならない。
従っていさえすれば、案外「縦」の方が楽かもしれない。
右と左のテーブルに挟まれて、なんだかそんなことを考えていた。
それにしても女性のエスパー話法は凄い。
脈絡のない話が途切れず延々と続いていくが、よほど「勘」がよくなければついていけないし、これは男性には真似できない。
これがまさに、「女の勘」だナ…。
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林 正寛 | ||