あしたは、どっちだ。
2014/08/09 | ||
先日、男は、上司からの命令に従い、チームの勝利(会社の利益)のために自分を犠牲にして働くという役割を、太古の昔から担っていると書いた。
しかしその反面、個人プレーヤーとして、「勝ちたい」、「強くなりたい」という反発心も強く、また、「強いものに抗うことが男の勲章だ」みたいな子どもっぽいところが大人になっても抜けなかったりする。
男は女性のように子どもを産んで育てるという経験をしないから、いつまでも成熟しないのかもしれない。
女性は、尾崎豊のことを、「素敵」、「カッコいい」、「あんな男性に愛されたい」と思うけれど、男性は、尾崎豊に完全に自分を重ね、同期させる。
だから、平気で尾崎豊(の歌詞)と同じ行動に出て、「校舎の窓ガラスを割ったり」、「ピンボールのハイスコアを競いあったり」するが、女性にしてみれば「男ってホント、バカよね」となる。
「世界一の男がリングでオレを待っているんだ。そこをどいてくれ」と、ナンバーワンになるために矢吹丈はリングへ向かう。
一方、矢吹丈のオンリーワンになりたい令嬢・白木葉子は、「好きなのよ矢吹君。私のためにリングに上がらないで」と告白し、懇願するが、矢吹丈は聞かない。
もしこのとき、白木葉子が、「矢吹君のことが世界でいちばん好き」と言っていれば、もしかしてだけど、矢吹丈はリングへ上がらなかったかもしれない。
男はナンバーワンの欲望が強いからね。あとは選択の問題だから、白木葉子のナンバーワンの存在として、幸せに暮らした方がイイに決まっている。
それはともかく、令嬢を振りほどいてリングに上がり、まっ白に燃え尽きた矢吹丈に、男たちは共感を覚える。「男のロマン」ともいうのだろうか。
女性にとっては、理解不能の生き物かもしれないが、男は、いくつになっても破滅の美学に憧れるところがある。
今、東京・練馬区立美術館で「あしたのジョー」の展覧会が開かれているが、矢吹丈が今もってなお「きのう」の人にならないのは、いつの時代にも変わらぬ男のDNAがあるからなのだろう。
白木葉子の告白に矢吹丈が嬉しさのあまり、「オレも葉子がいちばんだ」なんて言えば、白木葉子に、「矢吹君、だれと比べていちばんって言っているの?もしかして2番がいるわけ?」などと問い詰められていたかもしれない。
こんな場合も男は、まっ白に燃え尽きてしまいたくなるのだが…。
「あしたは、どっちだ」
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林 正寛 | ||