侮ってはいけない。
2014/08/08 | ||
リケンの「ふえるわかめちゃん」という商品は、乾燥させたわかめのかたまりがたくさん袋に入っていて、お椀にパラパラと出すといかにも一粒が小さい。
― これじゃあ、あまりにも少ないな。もう少し…、パラパラっと…。
しかし、侮ってはいけない。
お湯をかけるとドンドン広がり、あっという間にお椀を埋め尽くし、お椀がわかめだらけになってしまう。
この商品のメーカーは、他に「わかめスープ」、「ノンオイル青じそドレッシング」などのヒット作を持つ理研ビタミン株式会社である。
独立行政法人理化学研究所が戦前、財団法人であった時代の理化学研究所が母体であり、STAP細胞の源流である。
当時、発見→開発→商品化→産業連携のスタイルをなす理研を母体とする研究・企業グループは、理研コンツェルンと呼ばれ、世の中に大きな影響力を及ぼした。
因みに、感光剤の研究部門は、現在のリコーとして独立し、日本のコピー機の技術革新に貢献した。
最近では、スーパーコンピューター「京」も、理研のプロジェクトである。
そんな理研が揺れまくっている。
世間から石を投げつけられるうえに会社のメンバーからもボコボコに袋叩きにされれば、誰だって逃げたくなるに決まっている。
小保方さんは、病院に逃げ込み、弁護士の影に隠れた。 笹井さんは責任者の一人として、それを良しとはしなかったのだろうが、世間から身を隠し、誰からも干渉されない逃げきれる場所はひとつしかない。
ただ、そこは残念ながら、この世にはない。
52才といえば、精神的にも社会的にも成熟した屈強の立場にあるといえる。
そんな人に一生、身を隠す決断をさせてしまった理研の責任は重い。
大切なメンバーを守ろうとせず、責任を押し付け再生不能にしておいて、なにが再生医療の進展のための研究だ。
再生医療の研究やiPS細胞を使った臨床研究は大切である。
しかし、理研は、シャーレや顕微鏡の中での現象や存在といった結果にばかりこだわり、もっと大切な、研究する側の「人」の存在を見落としていやしないか。
科学とか宇宙とか、そんな広大で壮大なものと比べれば「人ひとり」の存在などちっぽけなものかもしれないが、侮ってはいけない。
そのことは、理研がいちばん知っているはずだが…。
残念、無念。
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林 正寛 | ||