放題。
2014/10/28 | ||
先日、家族がスマホを買い替えたいというのでショップについていった。
対応してくれたのは若い女性店員だったが、料金プランなどの商品のことやらスマホの操作のことなど、よくまぁこれだけのことが頭に入るもだと感心し、つい、
「よく知ってますね」と褒めると、
「エエ…」と、はにかんだような笑顔を浮かべた。
ふと女性の名札を見ると、超有名アイドルと同姓同名で漢字まで一緒であることに気付き、さらに突っ込もうとしたが、よした。
この女性は毎度、お客さんから同じ名前だと突っ込まれ、うんざりているだろうし、私生活においても、名前を記入するたびに「○○と同じなんですね」と言われ、そのリアクションに戸惑ったりすることが多いのだろう。
ここは見て見ぬ振りをする方が彼女のためだと、ひとりぼそぼそ思案していると横から家人が、
「あら、お姉さん、○○と同じ名前」と、見たままをずばりと言った。
「エエ…」
明らかに先ほどのはにかんだ笑顔の「エエ…」とは違う、どこか困ったような「エエ…」で女性は答えた。
なんだか気の毒になり、「でも、○○よりもオネエサンの方が可愛らしいかも」と、うっかり、酒を飲みながらするようなつまらぬ発言をしそうになり、慌てて口を手で押さえた。
「それで、あなたはどうするんですか」
「どうって、何が?」
「聞いてなかったんですか?お得な料金プランに変更できるんですよ」
オネエサンを見ていて聞いていなかったとは言えず、
「もう少し詳しく教えて欲しんだけど、このスマ放題ってなんですか?」
結局、聞いていなかったんだと叱られた。
それにしても、通話し放題やらネットし放題など、通信の世界も「放題」かと、ややうんざりする。私には「放題」の価値がよくわからない。
時間制限の中で限られたアルコールを並べた「飲み放題」やビュッフェスタイルの「食べ放題」は、どこか品のなさを感じるし、物の正当な価値がわからなくなる。
限られた「時間、使用量、料金」などの中での「放題」は、飲めればいい、食べられればいい、使えればいい、着られればいいという物の価値を無視した欲求を満たすだけのものであり、どこか使い捨て感覚があるように思えてならない。
安いから物を大切にしないという考えにも結び付くようにも思える。
料金は同じだからじゃんじゃんネットを見る…。
なんだかおかしかないか。物の価値観が下がるのも当然だと思うが…。
「どうするんですか、あなた」
家人の言葉に女性店員が反応した。
「ご主人様の現在のご利用状況ですと、スマ放題のこちらのプランがお得かと思いますが、ご変更なさいますか」
「エエ…」
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林 正寛 | ||