岩田は腐らない。
2014/10/07 | ||
阪神タイガースに岩田稔という投手がいる。現役バリバリの30歳。
岩田と私の自宅は至近距離にあり、普段からしょっちゅう顔を合わせるので、阪神の選手の中でも特別に応援している。
しかし、彼には不運が付きまとう。
事の発端は、大阪桐蔭高校時代。2年生ですでにエースとして活躍していたが、風邪をひいた際のウイルス感染が原因で1型糖尿病を発症した。
高校3年生夏の大阪府の大会は、腰の故障で登板できなかった。
高校卒業後は、社会人野球チームに進む予定であったが、1型糖尿病がわかり取り消されてしまった。
大学のリーグ戦でも故障に悩まされ、通算成績は6勝10敗。
阪神入団後の3年目(2008年)にプロ初勝利を挙げ、その年は10勝をマークするも、その後、肩を故障して、2009年は7勝どまり。2010年には、今度はひじを故障し手術したため、その年は登板なし。以後、9勝、8勝、2勝。
よくここまで腐らずにやってきたなと思うが、彼の不運の極めつけは、岩田が好投するときに限って打線の援護がないことが多いということ。
だから、彼の通算防御率は勝ち星の割には決して悪くない。
今シーズンは、久々に好調を維持したが、9勝どまり。
打線の援護に恵まれず負け投手になった試合、0点に抑えながら降板し、その後に味方がようやく点を取り救援投手に勝ちがついた試合など、何試合もあった。
ちなみに、今シーズンの岩田の防御率は、セ・リーグで2位である。
スポーツに「たら、れば」は禁物ではあるが、打線が普通に点を取っていれば、間違いなく11勝か12勝はしていた。
それでも岩田は腐らない。
投手は通常、降板した後は、ベンチの後ろの方にドッカと座り観戦することの方が多いが、岩田投手は、打たれて降板しようが、好投して打線の援護がないまま退こうが、ベンチでは一番前で立ち、チームに声援を送っている。
彼は今でも1日4回のインスリン注射は欠かせない。
同じ病気と戦う人たちを勇気づけたいと、1勝するたびに10万円を糖尿病研究のために寄付をする。
寄付も偉いが、何よりも苦難にくじけず腐らないその態度、生き様が、1型糖尿病に苦しむ人はもちろん、ファンもそうでない人に対しても勇気を与え、生きるつっかえ棒になる。
腐ったら試合終了だと。
見習いたい。
でも、岩田くん、言っておくけど、今年も阪神ファンは腐ってばかりだったからね。
来年こそは阪神ファンが腐らないシーズンを。
そこんとこヨロシク。
|
||
林 正寛 | ||