ニッポン、ニッポン、ニッポン。
2013/06/05 | ||
会社帰り、駅までの道すがら、数人のサラリーマンが居酒屋の前の路上でワイワイガヤガヤと話をしていた。 よく見ると女性も何名かいて、なんとなく歩を緩めて様子を見ていると、最後に少し年配の男性が居酒屋から出てきた。すると女性が、その男性に向かって、
「課長っ!次、カラオケ行きましょうよ。イイじゃないですか、たまにはぁー」
「そうやな、うん、行こか!」
タクシー2台に分乗し、賑やかな余韻を残して行ってしまった。
― いいなぁ、楽しそうで…。
独立起業してもうすぐ7年。こんな雰囲気はもう味わえないので、ちょっと羨ましいかもしれない。
若い時分は取引先の接待で、みながモジモジして歌いにくくなる前に、上司からの演歌熱唱命令を受け、1番手で突入していた。
♪~あなたはだれと契りますか~ ♪~冬のリビエラー 男ってやつは~ ♪~お酒はぬるめの燗がいい~
歌うたびに恥をかいたが、なんでも歌ったもんだ。 誰かが歌えば、次はオレもオレもになるから、後はタンバリンやマラカスをやっていればいい。
今は、一人カラオケ専門店(ワンカラ)が人気で、グループだと歌えない自分の好きな曲を1畳ほどのスペースで、ヘッドホンをして思う存分歌に没頭するのだという。
20歳以下の若者がカラオケで歌うのは、主にネット発の作品が中心である。 彼らは、一般人が動画共有サイト「ニコニコ動画」などに自らが歌う動画や自作の楽曲を投稿した中から、自分好みの作品を発掘し応援するという「参加型コンテンツ」を求めているらしい。
SNSなどを通じて友達と一緒に応援しながらメジャーに育てることがなにより楽しいようであるが、私の世代の価値観とは明らかに相違する。 目的を同じくする若者が集う「共有サイト」の中でこそ、彼らは躍動するのだ。
PC、スマホ、SNS、ニコ動、一人焼肉にワンカラ。 こうしてみると、今の若者は、ナマのコミュニケーションの場がないように思うが、これで果たしてダイジョブなのだろうか。
盛り上がったサッカーW杯予選の日本―オーストラリア。 同じ目的に向かい「ニッポン」を連呼する若者たちの姿を見ていると、埼玉スタジアムが巨大な共有サイトに見えてくる。
彼らは、試合が終わり共有サイトを出れば、一人、ワンカラに向かうのか。 「ニッポン」はどこへ向かえばいい…。
|
||
林 正寛 | ||