星にも優る輝き。
2013/06/20 | ||
松江市に住む叔母から地元で栽培されたブドウが届いた。 同じ品種のものでこれほどまで大粒のりっぱなものは大阪では見かけない。
お礼の電話を入れると、先月に来阪した際、大学生に成長した長女に何年かぶりかで会えたことが嬉しくて贈ってくれたのだという。
― 叔母が最後に長女に会ったのは、長女がまだ小学5年生の頃だったか…。
ありがたいことだ。
故郷の松江を親の転勤で離れてから34年。 松江から岡山に引越した当初は、マクドナルドも知らずに恥をかいたことは、以前、どこかで書いた。 また、私はその当時、生まれて初めてプラスチック容器に入れられたスーパーで売っている「刺身」を口にしたが、なんだか油臭くてとても食べられなかった。 当然今では、まったく気にならない。
松江にいるときは、行商のおばさんが沖で獲れた活きのいい魚を毎日のように運んでくれて、それを母がさばいて食べさせてくれた。 魚はまだ生きていて、どれもキラキラ輝いていた。
剣先イカなんかは、透き通るような乳白色で、そこに褐色の斑点が浮かんでは消え、まるでイカの息づかいが聞こえてくるかのようであり、少年の私は飽きることなくボウルに入れられた魚たちを眺めていた。
当時は魚料理が中心で、肉料理はほんのたまにしか食卓に登場しなかったのだが、今の私の丈夫なカラダは、新鮮な魚たちの命をいただいてきたおかげであるように思う。
今ではすっかり都会人気取りの私は、時々、お店でこんなことを口にする。 「うーん、さすが星一つは美味いねぇ…」 なんて、実はさっぱりわかっていなかったりする。
外国のタイヤ会社の星がいくつ輝いたとしても、あのころの魚たちの輝きには及ばない。
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林 正寛 | ||