損な性格。

損な性格。

  2014/06/10  
     
 

娘がブツブツ言いながらパソコンでなにやら懸命に調べている。

 

若干、機嫌が悪そうだし、こういう時は下手に話しかけると作業がこっちに飛んでくる可能性があるので、基本的には見て見ないふりを決め込む。

 

本人からの申出があれば、父親として娘のために手伝うことはやぶさかではないが、汗は自分でかいた方がいい。

 

「お父さん、あのな、大学でグループ別に発表する課題が出てんねん」

 

「ふ~ん、それで」

 

「5人で話し合ってんやけど、全然まとまらんくて…。わたしな、ぐだぐだと進まへんのって嫌いやから、じゃあ取り敢えず私がまとめてくるって言って、引き取ってきてん」

 

― なんだ、そんなことか。

 

「いいじゃないか。誰かがやらなければ進まないんだから」

 

「そうやけどな、なんで私がせなあかんねんなって…。いっつもこうなってまうねんなぁ。ホンマに損な性格やわ」

 

― うん、うん、おるなぁ、こういう損な性格の奴…。

 

 

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誰かがやらなければならないとき、誰かが汗をかかなければ進まないとき、誰かが損を被らなければ得られないとき、私は率先して手を挙げ、人の役に立つということと自分の利益は両立しにくいことをきちんと頭に覚え込ませた方がいいと思う。

 

世の中は理不尽だらけで都合のいいことはほとんどない。

 

努力は報われないし、自分は悪くないのに責められるし、友には裏切られるし、彼女には振られるし、子供には理解してもらえないし、マナー違反を注意したら逆切れされるし、阪神は負けてばかりだし、傘を持っていないときに限って雨に降られるし、車はぶつけるし、電車の中で腹が痛くなるし…。

 

 

最初から得を取りにいって取れるはずがない。

 

例え取れたとしても、長続きはしないんじゃないのかな。

 

奉仕の精神、サービス精神は自分を犠牲にすることの上にしか成り立たないし、もちろん見返りを求めてはいけないが、得るためには必ずここは通過しなければならない。

 

他人のために尽くす「利他の心」を持つことは難しいことではあるが、それが誰かの役に立つことであるし、人が生きる価値とは案外、そんなものかもしれない。

 

 

汗は自分でかきましょう。

手柄は人にあげましょう。

そしてその場で忘れましょう。

 

竹下登元首相が残した言葉である。

 

言い得て妙である。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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