品格。
2014/06/17 | ||
「メガネの三城」などで知られる三城に対し、公正取引員会が消費税増税分を取引先に支払うよう勧告した。
消費税の転嫁を拒否し、相手に負担を押し付ける「買いたたき」であるが、やり方が実にこすい。
三城が店舗の土地建物を借りている比較的立場の弱い個人所有者127に対しては、「消費税が5%から8%に上がっても賃料の振込額は変えない」と高飛車な書面を事前に送りつけ、賃料に消費増税分の上乗せを認めなかった。
ところが相手が規模の大きいショッピングセンターなど、比較的強い立場にある事業者480に対しては、賃料と消費税額をきちんと分けて賃貸契約をし、増税分を転嫁して賃料を支払っていた。
三城のような知名度の高い、事業規模の大きな企業の仕業とは思えない。
消費税の増税は、企業にとっては大変な負担になる。
うちの会社のように商品の仕入れや販売がない手数料ビジネスの場合、売上げの金額に応じて額面通り消費税を払わなければならない。
もちろん、手数料は消費税を課税した上でいただいているので、理屈上はいただいたものをそのまま支払いするだけのことであるが、源泉税などの「預り金」の支払いも同じで、資金繰り上の負担感は大きい。
消費税は、来年からは10%になる見込みであるが、従来までの5%の倍になるわけで、支払い消費税が100万円規模の会社だと200万円になり、5000万円の会社だと1億円になる。 とにかく辛いの一言に尽きる。
三城のような対応をされると、個人のオーナーさんは増税分を個人負担しなければならなくなる。しかし、賃料への転嫁を強く求めて三城が撤退でもしようものなら賃料すら入ってこなくなるので、そうなれば元も子もない。三城はそんな弱い立場につけ込んだわけだ。
いくら立派な企業理念を掲げたとしても、素晴らしい行動規範をいくつ並べたとしても、魂が抜けていればただの文字の羅列に過ぎない。
割安メガネの攻勢もあり、メガネ業界の競争は激しくなっているのだと思うが、個人も企業も商品も、品格を失ってはいけない。
三城の商品コンセプトには、「洗練」や「気品と品格」などの言葉が並ぶが、気品に満ちた視界良好のメガネを市場に提供する以上は、企業も同様の品格を備えていなければ消費者は納得しない。
品格は美にも優るということを忘れてはならない。
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林 正寛 | ||