最後は金目。

最後は金目。

  2014/06/19  
     
 

先月、弁護士の先生から売却を依頼された中古マンションの内覧会を行っていたときのこと。

 

隣りの部屋から中年男性が出てきて、「おたく、誰?何やってんの?」

 

いきなりなんだよと思いながらも、このあたりの単刀直入さが関西人だなぁと半ば感心しながら、概略を説明した。

 

「へぇ~、ほんで、なんぼで売れそうなん?うちの部屋だとなんぼするか教えて」

 

― オジサン、自分の家をお金に換算して何がしたいの…?

 

 

これは関西人に限った話ではないが、このごろはお金の情報が溢れていて、テレビやネット、雑誌には「¥」マークが飛び交っている。

 

「お宝鑑定」などと称して家にある骨董品を値踏みする番組もあるが、一体、金の価値に換算して何を知ろうとするのか。

 

私の仕事は「換価」が中心なので、毎日のように不動産や美術品、宝飾品を査定し、建物解体費用や不用品の廃棄費用を見積りする。

 

お金が絡む話はどうしても品がなくなるけど、そこはビジネスと割り切り、社会貢献の一環という大義名分があるからこそ、「換価」に努めることができるというものだ。

 

 

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これだけ多くの物と情報が溢れ、デフレの影響もあって安い物こそが価値あるもののような風潮が広がり、物に対する正当な価値判断がむずかしくなってきた。

 

また一方では、星が付いているか、付いていないか、星が何個ついているかなどと他人が決めた曖昧な基準の料理に高いお金を払ったりする。

 

「このシャツ安いわぁ。お父さんとお兄ちゃんと、そうだ、おじいちゃんの分も含めて、まとめ買いしよ! 得したわぁ~」

 

「このお値段だけあって、さすが美味しいわね。これならこのくらい払っても価値があるわ」

 

安かろうが高かろうが、お金に換算すると、どうにも品に欠けてしまう。

 

 

* * * * * *

 

 

「ハヤシさん、ラストオーダーの時間ですけど、お料理の追加はありませんか」

 

「なにかお勧めはあるの?」

 

「金目鯛の煮付けはどうですか。身がプリプリしていて美味いっすよ」

 

「プリプリっていう語感がいいナ~。じゃあ、最後は金目(きんめ)で」

 

「ハヤシさん、やだな、金目(きんめ)じゃなくて、最後は金目(かねめ)でしょ」

 

「そう言うと思ったよ。ほら、品がなくなっちゃったじゃないか」

 

 

本人は発言を撤回し謝罪しているけど、大の大人が何やってるんだか。

 

だから「政治家は所詮、金だ」って言われるんだ。

 

まったく、品が無いったらありゃしない。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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