アチョー!

アチョー!

  2014/06/12  
     
 

先月、何十年ぶりかで朝の通勤ラッシュの時間帯に、地下鉄御堂筋線に乗車した。

 

大阪でもっとも混雑がひどい路線である。

 

関西人はいまだに整列乗車が苦手で、電車がホームに入ってくると、ドアに対して台形の底辺が広がるような体勢で乗車しようとする。

 

まじめに整列乗車しようとすると、左右からドンドン横入りされるので、ドア付近でカラダがくるくる回りながら弾き飛ばされ、ホームに戻されてしまう。

 

だから、真ん中あたりにいる人は、中央突破をめざして肩からタックルするように飛び込まなければ乗車できない。

 

 

まじめな私はそのとき、きちんと整列乗車をしようとし、しかも何十年ぶりかの猛烈なラッシュに対するコツも忘れていたので、どのように乗車したものかと一瞬もたついた。

 

すると横から若い女性が、肘をやや曲げ、指先はピンと伸ばし、まるでブルース・リーのような格好でジャンプするようにして飛び込んできた。

 

― アチョー!(あなた邪魔よ、どきなさい!)

 

私は、あやうく弾き飛ばされそうになったので、肩からグッと一歩車内に踏み込んだ。

 

― ワチャー!(若い女性に負けてたまるか!)

 

電車は物凄い混雑で、車内ではその女性と私が寄り添うようなかっこうになった。

 

― アーチョチョチョ?(何よ、あなた。触る気?)

 

― ワーチャチャチャチャー(お願いされても触らないけど)

 

― アーチョー!(あっち行きなさいよ!)

 

― ワーチャー!(行けるわけないだろ!)

 

 

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駅のいたるところにポスターが貼ってある「痴漢アカン!」

 

「一瞬のあやまちが人生を台無しにする」こんなのもある。

 

痴漢行為は当然よくないが、しかし、この混み具合だと冤罪もなくならないだろう。

 

冤罪は後にそうだと証明されたとしても、逮捕・起訴の事実だけで人生は十分台無しになる。

 

結局は、自分の身は自分で守るしかない。

 

ブルース・リーみたいに自分から突っ込んでくるような女性がいれば、乗車を諦めて次の電車を待つくらいの心と時間の余裕を持つことだ。

 

間違っても、ムキになって押し合いなどしてはいけない。

 

人生が台無しになることに比べれば、このくらいのことは何でもない。

 

 

― ウ~、ワーチャーチャーチャー!(君子危うきに近寄らずだナ!)

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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