月明かり。

月明かり。

  2014/04/22  
     
 

明治時代のこと。

 

生徒が「I love you」を「我君ヲ愛ス」と訳したときに、それを聞いた先生が、「そこは、“月が綺麗ですね”とでもしておきなさい」と言った。

 

この先生とは、ご存知、夏目漱石である。

 

この話は以前、ブログに書いたことがあるが、私は夏目漱石の、人を愛する思いを月明かりに例える情緒が好きで、だから、夏目漱石が愛した「電気ブラン」というお酒もよく飲んだ。

 

「電気ブラン」についても、以前、ブログで紹介しているので繰り返しになるが、

電気ブランは、ブランデーベースのリキュールで、夏目漱石や太宰治などの明治から大正期の文豪が愛した。

 

名称の由来は、当時、新鮮でモダンな言葉であった“電気”とブランデーを組み合わせたものであるが、電気のように口の中がビリビリと痺れるためという説もある。

 

鹿鳴館時代に思いを馳せながら、東京神田のガード下あたりで網焼き肉の煙に巻かれ、カリカリに冷えた電気ブランを飲むのがイイ。

 

 

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100年前の4月20日、夏目漱石の代表作「こころ」の連載が朝日新聞で始まったことを記念して、再び、朝日新聞で「こころ」の連載が始まった。

 

私は昨年、この「こころ」をはじめて読んだ。「こころ」を読み解く書籍も読んだ。

正直なところ、深すぎて頭が整理できないでいる。

 

文明が肥大化した現代に宿る影のようなものを「こころ」から感じ取ることはできるが、実感はない。

 

夏目漱石の作品はどれも、強い洞察力をもって読まないと、そして何度も読み返さないと、いったい何が書いてあったのか、皆目わからない。

 

ただ、どれもが、現代社会が抱える苦悩、病巣ともいうべき問題点に通じるものがあるが、夏目漱石の言葉や批評にもそれが表れているものがたくさんある。

 

「多勢で一人を馬鹿にしてはいけない。それは、自分の無力さを天下に言いふらすようなもので、そのような者は人間のカスである」

 

これは、愛媛県尋常中学に在任中の言葉である。

 

イメージとは真逆の鋭い言葉であるが、個人を尊重し、他人に敬意を表す紳士的な生き方をする夏目漱石ならではの言葉である。

 

 

 

それにしても「人間のカス」とはよく言ったもんだ。

 

まさに現代に通じる言葉ではあるが、100年前から夏目漱石はその点について憂いていたとすれば、人間はまったく進歩していないということじゃないか。

 

社会の闇はとても深いということか。

 

 

綺麗な月明かり(愛)で照らすしかない。

 

 
  林 正寛  
     
     

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