詮無い話。

詮無い話。

  2014/04/09  
     
 

彼の年齢は60代半ばである。

 

前職時代にともに過ごしたが、彼はすでにそこは定年となり、現在は別の会社に再就職している。

 

時々、飲みに出かけては、私の会社の様子をいつも気にかけてくれていたが、昨年11月にドンチャン騒ぎして以来、珍しく連絡がないなと思っていたら、その翌12月に体調を壊し、以来、闘病していると聞いて驚いた。

 

私などとは違い、健康にいつも注意を払い、人一倍運動もして健康が服を着て歩いているような男だったので、にわかには信じられなかった。

 

金融機関に勤務しているときは身を粉にして働き、支店長まで上りつめたが、バブルの崩壊で会社が破綻したため、その職のおかげで責任の追及は厳しかった。

 

その後は私と同じ会社の同じ部署で、反社会勢力の連中などを相手に体を張って債権回収の仕事をしてきた。

 

以降、定年まで勤め上げ、再就職後はどこか悠々と過ごしていた。

 

昨年、一緒に酒を飲んだときには、社会人になった娘と二人で海外旅行に行った話を嬉しそうにしていたが、その矢先に病に倒れた。

 

 

切ないことである。

 

一人の男が激動の時代に耐えながら職務をまっとうし、家庭を守り、子供を一人前に育て上げ、ようやく自分の時間が持てるようになった、そんな時である。

 

やはり神などいないのだろう。

 

 

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クサガメなどのカメ類だけに寄生するヒルの一種の「ヌマエラビル」の研究が行われている。

 

ヌマエラビルは、零下196度まで凍らせても死なない。9ヶ月間、凍らせたまま保存しても、解凍すると100%生き返る。

冷凍と解凍の繰り返しには、最大12回まで耐えた。

 

人としての尊厳、倫理など百も承知であるが、世の不条理がそうくるなら、こっちもこの小さな小さな存在のヌマエラビルに人間の未来を賭けてみたくなる。

 

凍らせても死なないメカニズムが解明できれば、不治の病で苦しむ人を冷凍保存し、医学が進歩した未来に解凍し治療ができないものかと…。

 

誰もいなくなった未来に目覚めて命を得てどうするなどと考えるのは詮無いことである。

 

ところが、ヌマエラビルが寄生するクサガメは、外来種に押されて数を減らしている。

ヌマエラビル自身が絶滅の危機にあるという。

 

一体、「不死身とはなんだ」と、その定義について考えてみたくなる。

 

 

それこそ詮無い話ではあるが…。

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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