ジグザグ運転。

ジグザグ運転。

  2014/05/01  
     
 

「すごいシャコタン。マニアはまだいるんだな」

 

クルマのバックミラーに映った後続車を見て私が言うと、後部座席の娘が、「えっ?しょこん?」

 

「しょこたんは中川翔子でしょ。シャコタンを知らないの?車高をわざと低くしたクルマのことだけど」

 

「知らない…」

 

― そうか知らないのか。

 

シャコタンというのは、スプリング部分に手を加えて車高を低く(短く)したクルマで、1970年代に繁殖した。

 

当時、それで公道を走るのは当然違法行為だったが、そんなものはお構いなしだ。

 

暴走族はもちろん、マニアの間でも流行した。

 

ところが、平成7年の規制緩和でスプリングの変更は一定の基準を満たせば特に届出も不要になり、合法になってしまった。

 

違法行為を楽しむのを常とし、違法こそは自己アピールの場だと考える人たちからすると、そんなおもしろくないことはない。

 

それで熱が冷めたのかどうかは知らないが、最近はすっかりシャコタンを見かけなくなった。

 

絶滅危惧種かもしれない。

 

穴をあけたマフラーからの爆音をそこら中に響かせて、原付をジグザグ運転しながら乗り回している高校生も見かけなくなった。

 

こっちはもう、完全に絶滅したのかもしれない。

 

 

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広島市には、八丁堀という繁華街があって、暴走族の人たちはその八丁堀を中心にして、右に回りながら暴走する時は「八丁右回り」。左回りは「八丁左回り」とかいって楽しんでいたようだ。

 

一般市民も遠くに響く爆音を聞きながら、「今夜は八丁右回りか」なんて、空を仰ぎ見ていたものだが、今では広島の街もすっかり静かになった。

 

暴走族が影をひそめたのは、警察の力かもしれないし、時代背景として、「カッコよくなくなった」のかもしれない。

 

別に暴走行為やバイクを乗り回すことを肯定するわけではないが、今の中学生や高校生は、みんなどこでどうやってうっぷんや欲求不満を晴らしているのだろうか。

 

ゲームをしたり、カラオケしたり、SNSでつぶやいたりといったところか。

 

 

 

私の青春時代は、つまり暇だったんだろうな。

 

ジャンケンで負けた人がコーラとポテトチップスを買いに行く。

 

黄色のヤマハ・パッソルに乗り、“ブンブンブブブン!”とまったく意味のないジグザグ運転をしながら。

 

 

他愛もないが、あの頃はそれで良かった。

 

 

しかし、勉強は大幅に遅れた。

 

おかげで、人生がジグザグ運転になってしまった…。

 

 

余計なお世話だ。

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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