細胞のかたまり。

細胞のかたまり。

  2014/05/09  
     
 

姦淫の罪で捕らえられたマグダラのマリアは、ユダヤの律法学者や民衆にイエスの前に連れて行かれる。

 

罪を犯したこの女をどう裁くのかと迫られたイエスは、この中で罪を犯したことのない人から彼女に石を投げなさいと言う。

 

しかし、誰一人石を投げる者はなく、一人、また一人とその場を去り、最後にマリアと二人になったイエスはマリアの罪を許す。

 

 

 

理化学研究所調査委員の記者会見を見ていて、この新約聖書の一節を思い出した。

 

調査委員のメンバーが過去に発表した研究論文に画像の切り貼りを行ったとする不正の疑いが出ている中、それはそれ、これはこれだからと、さっさと結論を出してしまった。

 

遅疑逡巡の様子は、会見を見る限り窺えなかった。

 

これで彼女の不正が確定し、追って処分の沙汰がある。

 

今、彼女の名前は不正をした科学者として世界中に広まっていることだろう。

 

今回の結論は、場合によっては、若い科学者の未来を潰してしまうほど重大なものであるのに、再調査もしないで、しかも身内の不正は棚上げのままにした。

 

なんだか結論ありきで、彼女をスケープゴートに仕立て上げようとしているのが明らかなように思えるが、同じ科学者として、同じ理化学研究所のメンバーとして彼女の今後に期待し、救いの手を差し伸べることはできなかったのだろうか。

 

 

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調査の目的は不正の有無だけであり、STAP細胞の存在の有無は関係がない、そこは知らんという。

 

しかし、科学者なんだから、もっと客観的理論的な解釈や事実の積み上げが必要だろう。

 

今となっては、STAP細胞の存在の有無は、宇宙人の存在の有無と同じくらい未知なものに思えてくるが、彼女にしても、「STAP細胞はあります」「200回以上作製に成功しています」とあれだけはっきり言ってるのだから、じゃあ、証明して見せてよと、その存在の有無も含めて白黒はっきりさせるべきではなかったか。

 

 

 

イエスといえども逡巡たる思いがあったと思うが、あのとき民衆がマリアに石を投げつけていたら、イエスはマリアを許す機会を失っていた。

 

だから、彼女に石を投げつけてしまった理化学研究所の罪は重い。

 

彼女は、許される機会を奪われ、そして一生、不正の十字架を背負って生きていかなければならない。

 

 

 

理化学研究所という巨大組織が、再生不可能な細胞のかたまりのように見える。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

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