先見力。
2014/05/13 | ||
旧広島空港は、天満川と太田川放水路の中州河口にあたる広島市西区観音地区にあったが、1993年に新広島空港が開港した後は規模を徐々に縮小し、定期路線があった空港としては国内初の廃港となった。
現在は、ヘリポートの機能のみが残されている。
この旧広島空港はパイロット泣かせと言われた空港で、特に着陸が難しいと言われていた。
私は、サラリーマン時代の1992年当時、広島に勤務していたが、1ヶ月に一度、東京本社の会議に出席するために、旧広島空港を利用していた。
どういう感じで着陸するのかというと、飛行機はまず、広島の繁華街がすぐ手に取れるような距離まで低空で旋回する。 広島球場(これも旧だな)や紙屋町のビル街、馴染みの流川のネオンが窓から斜めに見える。
そしてその後、「せーの!」といった感じで、中州河口から滑走路に向かって突っ込んでいく。
乗っていてもなんだか恐ろしく、着陸の時はいつも、肘掛を握って肩に力を入れて構えていた。
私一人が構えたところでどうにかなる話では無いが…。
小雨程度でも視界が悪くなって着陸できず、何度、山口の宇部空港まで連れて行かれたかわからないが、宇部空港への変更を決断するまでの間、何度か繁華街を旋回して着陸を試みようとするからたまらない。
こっちは、そのたびに肩に力を入れて足を踏んばらねばならない。
― そんなチャレンジはしなくていいから、早く宇部に行こうよ。文句は言わないから…。
飛行機や列車、旅客船などの事故のたびにクローズアップされる人災の側面がある。
いつの時代も企業側の利益が優先され、顧客が犠牲になるという構図が浮かび上がる。
韓国の旅客船セウォル号の事故は、運航会社の順法意識を後回しにした結果至上主義の前に多くの前途ある若者が犠牲になったことは間違いない。
道徳心のない経済活動は批判の対象となる。
船長らの職業倫理に欠ける行動も大きな問題になっている。
企業の「企」の字は、人間を横から見た「人」と足跡の形を指す「止」から成り、人がつま先立ちをして遠くを見ている姿を表している。
つまり、先を見通すという意味である。
公共の利益のために活動するという企業本来の目的に適った経済活動ができているかどうか、そこを見通す力があれば、顧客の安全確保も自然と付いてくるようになる。
チャレンジするか迂回するか。
企業の先見力が問われる。
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林 正寛 | ||