のび太の時代。

のび太の時代。

  2014/05/21  
     
 

今、対応させていただいているお客さんは60才の男性で一人暮らし。職業はタクシードライバー。

 

「ぼくとつ」とした飾りっ気のないどこにでもいるオッチャンだと私は思っていたが、ある時、机の上に大藪春彦の小説「蘇る金狼」が置いてあるのを発見して驚いた。

 

― なんだ、案外ハードボイルドだったりして。そういえば、いまだに煙草はショートホープだしナ。

 

「蘇る金狼」は、同名の映画、ドラマが多数製作されているが、なかでも松田優作主演の映画が有名だろう。私も何度見たかわからない。

 

大藪春彦の小説は、ハードボイルド小説の代表格で、私くらいの年代の男性の多くが主人公の生き様に憧れをいだき、シリーズを読み漁ったものである。

 

「大藪春彦がお好きなんですか」

 

「ええ、いくつになっても憧れますよね。今の私とは比べものになりませんが」

 

「比べる必要はありません。私も好きですし、大人の男はこうあるべきだみたいなこだわりは今もあります」

 

 

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タクシードライバー曰く、「最近は、酒に酔った男性を女性がタクシーで送っていくケースが多くなった」

この場合、料金も女性が払うことになる。

 

それでも女性は嫌な顔一つせずに、むしろその状況を楽しんでいるような感じがするらしい。

 

そんな手間のかかる、多少だらしないくらいの男性に対し、放っておけないという母性本能が支配するのだろうか。

 

私は少なくとも、「孤独に耐え、妥協せず、ときには冷酷非情と思われるくらい感情に流されることなく、肉体的にも精神的にも強靭」な男に憧れたし、そうありたいとも思っていた(実際は、その真逆に育ってしまったけど…)。

 

しかし、時代が違うし、ハードボイルドも裏を返せば、「優しさが無く、根暗でユーモアに欠け、融通が利かない堅物で、健康だけが取り柄」の男である。

 

これでは今の時代、女性にはモテないだろうな。

 

 

そういえば、こんなCMを見た。

 

のび太からの電話に驚き、しずかちゃんが急いで海辺に向かうと、のび太が泣いている。

 

その不甲斐ない姿にしずかちゃんはビンタを浴びせる。

 

「だって、なにやっても上手くいかないんだもん」と泣くのび太の手を取り車に乗せる。

 

「なんでしずかちゃんはこんな僕と付き合ってくれるの?」

 

「のび太さん、私がいないとだめじゃない…」と優しく微笑むしずかちゃん。

 

 

今はこんな時代かもしれない。

 

これからはこの路線でいくとしよう!

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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