前兆。

前兆。

  2014/05/10  
     
 

最近、書店で「昭和の大阪」というタイトルの写真集を立ち読みした。

 

たしか、昭和20年~昭和50年頃の写真が掲載されていたと思うが、白黒写真なのに街も人も表情が豊かで活気を感じた。

 

そういう写真を選んで載せているのだろうが、大人も子供も高齢者も活き活きとしており、生きる活力が感じられる。

 

古き良き時代のリアリティというか、当時の荒っぽい息づかいまでもが聞こえてきそうな勢いである。

 

 

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私は普段、市営地下鉄の谷町線をよく利用する。

地下鉄なので当然、外の景色は見えないが、その代わりに乗客の様々な表情を見ることができた。

 

中刷り広告を丹念に眺める人や読書をする人。居眠りをしたり、おしゃべりをしたり、じーっと考え事をしている人もいる。

 

ところが最近、携帯・スマホの電波が入るようになった。

 

他の市営地下鉄はたしかとっくに電波が入っていたように思うが、谷町線だけは何故だか長らく電波が入らず、携帯・スマホが使えなかった。

 

― 必要以上のことをする。

 

私はそう思う。

 

旧弊だと思われるかもしれないが、地下鉄に乗っているときぐらい、携帯・スマホを手放したらどうか。

 

おかげで車内の様子がすっかり変わってしまった。

 

多くの人がうつむき、同じ表情で携帯・スマホの画面を見ている。

 

人差し指だけが忙しく動いているその様子はちょっと不気味な感じさえする。

 

そこにはリアリティはないし、息づかいも聞こえてこない。

 

 

時代の流れだから仕方がないし、今さら昭和の活気あふれる表情を望んだところで詮の無いことである。

 

しかし、この端末を眺めている同じような表情を見ていると、この先が思いやられる気がする。

 

なぜなら、進化は止まらないからである。

 

やがては腕時計型や眼鏡型の端末が普及するようになるだろう。

 

そうすれば、街中、同じ眼鏡型端末を付けた同じ表情をした人たち行き来するようになる。

 

まるでアンドロイドのようだ。

 

なんだかオソロシイ。

 

 

人類は進化しすぎて最後は人間性を失うのか…。

 

 

 

「昭和の大阪」がやけに懐かしく思えたのは、私の中からすでに人間性が喪失し、アンドロイド化が始まっている前兆なのかもしれない。

 

 

不具合だらけのアンドロイドだけど…。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

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