ポリスマン。

ポリスマン。

  2014/05/16  
     
 

外国人旅行者に声を掛けられた。

 

― なにも、曽根崎警察署の前で私に声を掛けなくても警察に行けばいいじゃないか。

 

こういう時はいつも、英会話を習っておけばよかったと後悔する。

 

しかし、相手は宇宙人じゃないんだから、気合次第では理解できないことはない。

 

 

以前、ハワイでのこと。

 

食事を終えて戻るとクルマが無い。

 

盗難にあったと思い、慌ててあたりを見まわしていると運よく警官がいた。

 

「ここにあったオレのクルマが盗まれた」

 

「ああ、あのクルマはお前のだったのか。それならレッカー移動した」

 

「なんてことをしてくれるんだ。あれはレンタカーなんだ。返してくれ」

 

「お前は駐車違反をした。レンタカーかどうかは関係ない」

 

「どこへ行けばいい」

 

「クルマは〇〇というところに保管してある。そこへ行って金を払うんだ。そうすればすぐに解放してくれるだろう」

 

「行き方を教えてくれ」

 

「そこからバスに乗って〇〇というところで降りればすぐにわかる」

 

 

何とかクルマの保管場所にたどり着き、レンタカーを見つけ、管理人室にいる若い女性に声を掛けた。

 

「あのレンタカーを返してほしい」

 

「ああ、あなたね。レンタカーをレッカー移動されたおバカな日本人は」

 

「おバカは余計だ。早く返してくれ。罰金はいくら払えばいい」

 

「〇〇ドルよ」

 

「これでいいだろ。クルマを返してもらうよ」

 

 

こうして英会話がまったくできないのに無事にレンタカーを取り戻すことができた。

 

つまり、気合だ。

 

 

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しかし、目の前の外国人はものすごいスピードで、しかも3人が代わる代わる喋るもんだから訳がわからない。

 

そりゃあね、うちの会社は、「ask it!なんでもお尋ねください」がキャッチだけど、私が英語を喋れるのか確認もしないまま一方的に、しかも早口で喋るなんて、それが人にものを尋ねるときの態度かと言いたい(言えないけど)。

 

とても手に負えないから、曽根崎警察署の前でこちらをチラ見していた若い警官を手招きして呼び寄せ、「スマンが後を頼む」。

 

外国人の一人が私に向かって実に大袈裟に「Oh! What a good idea!」

 

でも顔つきは、「ああ、あなたね。レンタカーをレッカー移動されたおバカな日本人は」の時とまったく同じだった。

 

なんだか妙にむなしい…。

 

 

その場を去り、しばらく行ってから振り向くと若い警官がしきりに頭を下げているのが見えた。

 

― なんだ、あの警官も喋れないのか。これが本当の“ポリスマン”だな。

 

 

 

今日はこのへんにしといたろか!

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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