風前の灯火。
2014/07/29 | ||
陰暦の1月15日を上元、7月15日を中元、10月15日を下元と呼んで神様に捧げものをする習慣があったそうだ。ルーツは中国。
お中元で贈られる物に食べ物が多いのは、本来、お供えの意味があったからであるが、今ではお世話になった方へ感謝の気持ちをこめて贈るという風習になっている。
お中元を贈る時期は地域によって多少異なるようであるが、7月1日から15日ごろまでに贈るのが一般的のようだ。
毎年、贈り贈られ、お礼状を出したり、いただいたり。
そうこうしているうちに梅雨が明けるので、今度は暑中見舞いを出したり、いただいたり。
この時期は案外、仕事以外のところでざわざわするが、7月も最終週に差し掛かり、ようやく落ち着いてきた。
贈り物で大変なのは品物を決めるまでで、今はお中元もお歳暮も電子カタログを見ながらネットで注文するので手間はかからない。
お礼状も暑中見舞いも、定型の文言を印刷するだけである。
今はメールという方法もある。
中元や歳暮、または暑中見舞などの季節の挨拶は古くからある風習で、多少の意味合いの変化はありながらも伝統を保ってはいるが、様式はずいぶんと簡略化され風情がなくなってきた。
私も合理化を進めている一人ではあるが、物足りなさを感じなくもない。
そんな中でたまに手書きのお礼状や季節の挨拶状をいただくことがある。
手書きは、手書きの暖かさというか、心からの何ものかが伝わってくるようで、こちらもありがたい気持ちになり、一言一句見入ってしまう。
女性の方からあまりにも達筆な挨拶状などをいただいたりすると、この方もいろいろとあったのかナなどと、いつものつまらぬ妄想をしてしまうほど、ミステリアスな感じがすることさえある。
印刷ではこうはならない。
筆を持つことの風習を忘れたくはないが、もはや風前の灯火である。
先日、ある資格試験を受けた。
昔から変わらず記されている「マークシートの悪い例」
― こんなにはみ出すわけないだろ。おかしいんじゃないの。
しかし、試験を始めてみて戸惑った。上手く塗りつぶせない。
― どうもはみ出してしまうなぁ。おかしいナ…。
「久しぶりに鉛筆を持ったものだから、マークシートを上手く塗りつぶすのに時間が掛かってしまって、試験どころじゃなかったよ。ハハハハ…」
「ハヤシさん、そんな言い訳が通用するほど、世の中甘くないですよ」
「やっぱり…!?」
|
||
林 正寛 | ||