現代版織姫様。

現代版織姫様。

  2014/07/07  
     
 

「コラァー!ウロチョロすなー」

 

― えっ?

 

「どこに目ぇつけとんねん。ちゃんと誘導せーや、ボケ!」

 

― なに?私のことか…?誰がボケやねん!

 

 

頭上から女性の怒声が聞こえてくる。

 

ドキドキしながら見上げると、そびえ立つほどデカいダンプカーの運転席から女性が身を乗り出して、工事現場の誘導のオジサンに怒鳴っている。

 

― なんだ、私じゃなかったのか…。それにしても若いな。

 

 

怒声の主は、茶髪ロンゲの顔立ちのきれいな若い女性である。

 

「早よせーや、あほ!」

 

― まだやってる。

 

 

おそらく、ダンプに乗っていなければ極普通の、いや、かなりイケてる風の女性であるが、それにしてもたくましい。

 

― 頼むからそのダンプに乗せて連れていってくれー!

 

 

なんだかそうやって、すがりたくなるような気にならなくもないが、触れると火傷じゃ済まないか。いや、それとも案外、素顔はしおらしいかもしれない。

 

想像はあれこれ膨らむけれど、

 

「なんべん言わせんねん。いい加減怒るで、ドあほ!」

 

― もう怒ってるしナ…。お口は悪いんだね。

 

 

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女性のタクシードライバーも増えている。

 

しかも、少し前までは、やや年配の、聞けば、旦那がぐうたら、ギャンブル好きで、なんとか一人息子を高校くらいは卒業させてやりたくてね、なんて感じの人が多かったが、この前乗ったタクシーの女性ドライバーは若くて、未婚。タクシードライバーになりたくて今、こうしてハンドルを握ってるときた。

 

運転はちょっと危なっかしいけれど、サービスが悪くて不機嫌で煙草臭いオッサンのタクシーに比べると何倍も心地イイ。

 

しかし、その女性ドライバーは、これまで業界は完璧な男性社会だったので、着替えやトイレなど、いまだに不自由な面が多いとこぼしていた。

 

なるほどね。

こうしたドライバーなどの現場での仕事の環境を整えていけば、女性が活躍できる領域はもっと増えるかもしれない。

 

希望する女性はまだ少ないとは思うので、企業としての費用対効果の問題はあるものの、省庁人事では女性の登用が増え、一般企業でも女性幹部は増えてはいるが、そんなのは全体からすればほんの一部に過ぎない。

 

電車の車掌さんも女性が増えたし、そういえば少し前には、女性がパイロットになるドラマもやっていた。

 

女性のための職種の思い切った底上げ、拡大がもっともっと必要だということだ。

 

 

「どこに目ぇつけとんねん。ちゃんと誘導せーや、ボケ!」

 

社会に対するこの一言に尽きるだろう。

 

現代の織姫様はたくましい。

 

 

 
  林 正寛  
     
     

株式会社アスキット・プラス

 

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