【破産管財】仮差押が付着したままの売却①
2015/01/28 | ||
金融機関の仮差押登記が残った破産管財不動産を売却しました。
同様のケースが昨年も1件ありましたが、先日、さらに1件、対応しました。
仮差押は破産開始決定により失効しますが、登記の抹消は仮差押債権者による仮差押申立ての取下げ手続きが必要です。 しかし、2件のケースではともに、仮差押債権者から取下げ手続きの協力を得ることはできませんでした。
ただ、この仮差押は、仮差押債権者の協力がなくても、不動産の売却後、買主への所有権移転登記が完了した全部事項証明書を添付して、破産管財人が保全部に対し仮差押登記の抹消嘱託の上申を行えば抹消されます。
つまり、仮差押債権者からすれば、仮差押登記を抹消する代わりにいくらかの抹消料を支払えと言える立場にないため、いくらも回収できないのに手続きに協力する必要はない、勝手に抹消すればいいじゃないかといったところです。
しかし、買主としては、「ああ、そうですか。じゃあ、後ほど速やかに抹消嘱託の上申をお願いしますね」では済みません。
なんといっても、まずは仮差押登記が付着したまま買主名義に所有権移転するわけです。 破産開始決定により失効していると言われても、せっかく手に入れたマイホームに仮差押登記が付着しているなど、気持ち悪くて仕方ありません。
それに、住宅ローンを買主に融資する金融機関にしても、そのような不動産に融資の承認をおろすことは稟議上、おおいに差し支えます。
抜け殻ではあっても、この仮差押登記のおかげで売却に影響が出ることは十分考えられます。
昨年のケースでは、買主が不動産業者でしたので、事情を説明して理解を得かつ、現金決済でしたので、取得資金を調達する必要もなかったため、事なきを得ました。
また、先日のケースは、買主は一般個人の方でご自宅用に購入されましたが、仮差押登記の抹消が所有権移転のあとになることについて説明を尽くしてどうにか理解を得ることができました。さらにこの方もたまたま現金決済でした。
偶然、この2件の案件は、仮差押登記が差し支えることはありませんでしたが、こんなケースばかりではありません。
仮差押をやりっぱなしにしておいて、そのうえ、「1円も回収できないのなら協力しない、そちらで抹消できるんだから勝手にやればいい」は、どうにも短絡的すぎますし、金融機関の公共性を疑います。
今は晴れているので傘はいらんと言っているのに、「貸してやる」。 今度は土砂降りだから傘を貸してくれと頼むと、「貸せない」。
金融機関のこの身勝手さを今さら愚痴っても仕方ありませんが…。
以上、「仮差押登記が残った不動産を売却した件」でした。
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林 正寛 | ||